テープ起こしとライター業務は違うの?
テープ起こしとは、取材や会議などの間、ずっと回していたICレコーダーなどで録音した音源を「きちんと読める原稿」にする作業です。これとライティングは違うのかどうかという質問を受けることがありますので、(「テープ起こしもできる?」みたいに)整理します。はっきり言って、別物です。
テープ起こしの募集ってあり得る?
テープ起こしとは、普通にしゃべっているものを録音したものをきちんと読める原稿の形にするものです。ときどきネットでも募集していますね。…が。私はいつも不思議なんです。「テープ起こしの募集って、普通にやるもの?」と。
テープ起こしのもとになる録音は、守秘義務があります。大事な音源を、募集を見てやってきた一見さんに渡しますかね…という疑問がいつもあります。
テープ起こしにも専門技術が必要です。内容を間違えたら大変なことですし、素人さんが普通にしゃべっているのを脈絡のある文章に直すスキルも必要です。特に、複数の方が同時にしゃべるセッションなどは、映像があるわけではないので音声だけで聞き分けなければなりません。相当のスキルが必要です。
いくつかの会社でテープ起こしを発注しているのを知っていますが、発注先はみなテープ起こしの専門会社です。しかも、法学なら法学、建築なら建築、とそれぞれに分野があるようです。
90分の会議を一度聞くと、90分かかります。聞き取れない箇所(指示語のところは指示しているものを明確に文章にしないといけません)、誰がしゃべっているかわからない場所があったら聞き直しです。わかるまで。専門用語も多いので、その業界の知識も必要です。90分の会議を文章にするのに、最低2~3日かかるという話はざらに聞きます。
テープ起こしは大事な会議だから頼む、大事な音源だから頼むという性質のものなので、畑違いの分野の方に頼むことも考えにくく、専門的に特化された会社がちゃんと存在します。素人さんが参入できる分野ではない気がします。
テープ起こしはただ「ブラインドタッチが早いから」だけでは通用しません。習熟が必要で、その上にかなりの時間がかかります。ものによりますが、ライティングの比ではないと思います。
テープ起こしとライター業務
テープ起こしをしていただいたものをリライトする作業としてのライター業務はあります。テープ起こしをしていただいた原稿を読み、それをまとめる仕事です。インタビュー形式のものを、よくまとまったインタビュー(あるいは、取材者が不在で、その方だけがしゃべっているように構成するもの)にする作業です。
テープ起こしの方のスキルによって大変度が違ってくるので、テープ起こし原稿を読んで「?」となったら差戻です。そのたびに直していただいているわけですが、そこで時間を取られると鮮度としてのニュースの価値、インタビューの価値がどんどん下がってしまうので、スキルの高い方と仕事をしたいです。
テープ起こしには通信教育もあります。添削がついているものです。ですが、あれを修了しても、仕事が来るかどうかは別の話だそうです。下積みで経験を積めば、非常に難しいスキルであるがために腕一本で稼ぐことは可能なのかもしれません。が、慣れた方でも90分のテープ起こしに6時間~8時間かかる(相場は5000円~10000円)と聞くとそれは果たして実入りの良い仕事なのだろうか。と思ってしまいます。
経験を積むなら、行政と提携しているテープ起こし会社(行政は議会を持っているので、必ず議事録を録る必要があります。そこを外注に出しているところも多いようです)ならあまり高くはありませんが仕事は確実にありそうです。
決して、テープ起こしは「誰でもできる」という仕事ではないと思います。もしテープ起こしを募集していて、応募してみたら「教材購入が必要です」と言われた…というなら、会社名で必ずググって、ちゃんと仕事はもらえるのか、教材詐欺ではないか?ということを疑ってください。